『八甲田山死の彷徨』
新田次郎、新潮社、1978
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(2017年)
映画は観たことがあったけれど書籍で読んだことはなく、ビジネススクールの課題図書として読みました。
授業のテーマは、旧日本軍の雪山訓練中の遭難事故における二つの隊の意思決定を評価するというものでした。軍隊としての正解かどうかは考慮せず除外しました。たとえば、訓練中止はこれらどこで判断すべきだったか;前日に悪天候がわかったとき、地元の村人から難しいと注意を受けたとき、訓練開始後に天候が悪化したとき、初日の野営後、といったことを議論しました。
十分な食料や装備をもって大所帯で訓練を開始し、訓練を続けて撤退の判断が遅れた隊は、遅れたとしても当時の軍隊の価値観からすると正しい判断をしているように最初は思えました。ただ、より正しい意思決定を100年以上たって評価するというのは、普遍的な正しさとは何かを考えているのであって当時のリーダーに思いをはせる必要はないのです。地元の案内人を依頼し、アドバイスに従い、少数精鋭で短時間で完了する計画で、全員無事に訓練を完了しています。
日本の歴史、日本の軍隊の歴史の観点で話題に上がることが多いこの遭難事故の物語ですが、授業の講義やグループディスカッションによって、組織や意思決定という観点の面白い読み方をすることができました。